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諸用ありまして、2004年ごろに作成していたビートのデータを開くという作業がありました。18年前はがっつりハードディスクドライブの時代。ということで2ミックスは救出できたとしても曲のデータまで開くとなるとなかなか無理があるだろうと思っていましたが、意外と開いてこっちもビックリしているところです。

過去の遺産

それで思わずツイートもしてしまった通り、サウンドが驚くほど安定していて、プロダクションとしてとても良かった。自画自賛で恐縮ですが過去の自分に学び直すところがあったので、気づいたことを少しまとめておこうと思います。奥義、は完全に言い過ぎです。

当時はとにかく波形でなんとかしようという考えでした。必要な音は波形から作り出すスタイル。ネタがサンプリングだったので、その時点である程度のメロディ感やアンサンブルは完成されていたというのもあります。基本的にネタを敷き詰めて、ドラムを足して、ベースを足して、曲としての展開をつけてという流れ。いたってシンプルなヒップホップのビートです。これに必要であればストリングス、リード、エレピ、ピアノなどを足すということも頻繁にやっていました。

今の自分のプロダクションと大きく違うのは、足すドラムをAkai MPC4000(もしくは3000)から鳴らしていた事。ベースはエレキベースを弾き、シンセはハードウェアのKORG TRITON-Rack(もしくはYAMAHA MOTIF ES)から録音していたということ。MIDIも半分以上は使用せず、ループを流しながら良い演奏や音が出たら録音して、録ったものを波形編集するといった具合。

MPC4000と3000には共通して、普段使いのドラムサンプル集、レコードからサンプリングしたブレイクや、SP1200でサンプリング後ピッチダウンしたサンプル音などを取り込んでいました。またサイン波ベースはS950からサンプリングしていたのを記憶しています。当時の定番、てやつですね。ここら辺はシステム的には簡素ですし、今の複雑なプロダクションとは比べ物になりませんが、ヒップホップの場合はここにレコード持ってる(もしくは知ってる)持ってないという分厚くて高い壁があったのも覚えています。

さすがに当時もMIDIはありましたしプラグラミングも結構簡単に出来ましたが、上記の「弾いて録って編集」という方法がサウンドに緊張感があり、かつ音楽的な仕上がりを得られるなと思ったのを記憶しています。いま改めて聞き直して、やっぱり同じ印象でした。

加えてこれもコツじゃないですが、当時は優れたオーディオインターフェイスが簡単に手に入る時代では無かったので、プロダクションの音は全体的にそこまでよくありませんでした。いまでこそ古いミキサーやビンテージのプリを通して良い感じにとか言えますけど、当時はそんなことをすると本当に音が悪くなってました。ですのでいろいろ試しながら仲間とも情報交換をした結果、オーディオインターフェイスにシンセやサンプラーを直結させるのが良いという話でした。実際この方が好印象だったのでレコーディングでは楽器類は常にインターフェイス直結でした。

WAVES

当時はプラグインを買うお金が無かったですし、DAWバンドルを除けば実務にたる無償プラグインも無かった。その結果30曲以上開いたセッションの9割以上でWAVESのプラグインしか使っていませんでした。

しかもほとんどのトラックでREQとC1この二つのみで作り込んでいるという、いま考えると暴挙に近いことをひたすらやっていました。リバーブその他の空間系もマスターチャンネルもWAVESの製品のみで構成していたことが、長い時間が経ってもセッションがすんなり開ける大きな要因になったと思います。WAVES製品もProtoolsと同様、見た目が変わってもバージョン間の互換が取れるよう徹底されていると感じます。ここが老舗の老舗たる所以なのかもしれないと思いました。

画像だけだとわかりにくいかもしれませんが、結構細かくEQしてました。コンプも強く潰すなどして原音の質感を意図的に変えていました。特にドラムブレイクなどは曲に合わせて意識的に質感を変えるなどしていた他、ネタのサンプルは必ずトラックごと複製して、ローパスフィルターをかけてベースの帯域を生成、もう一方はハイパスにして中域をドラムに明け渡すなど、いわゆるハードウェアサンプラーで往年のビートメイカーがやっていた基本的なことを再現するような努力が見られました。

グルーヴ感

このほか、波形はアタックで切って、ひとつひとつグリッドからずらしていたこととか、ずれた先で他の音とのアンサンブルにも配慮していたこととか、いろいろ発見がありました。ここから随分時間が経ってポップスの仕事などもするようになって、逆に全てオングリッドでビタビタの方がアレンジとしての問題が起こりにくいとか、オングリッドでもヴェロシティで音の強弱をつけることで表現が豊かになることを学びました。が、やはりヒップホップ、ひいては自分の音楽はこういう「ずらしてグルーブを作り出す」方がカッコいいんだなと、改めて思い知りました。曲全体というより、4小節または8小節のループ作りに時間をかけていたことも思い出しました。今ではグリッドからずらすこともオングリッドで並べることも無意識にやっていますが、ちょっと無意識すぎる自分がいることも確かで、もう少し「ずらす」つまりグルーブを生み出すことに執拗に取り組む必要性を改めて感じました。

ちなみにこれは余談で大きな声では言えませんが

マスターチャンネルはほとんどの曲で赤が付いてました笑。

化石ファイルの開き方

最後に限定的なワンポイントですが、古すぎるセッションデータを開くには少しコツがありました。

ファイル末尾が「.ptf」「.ptx」のものは問題なく開けますが、時々、

こういう謎アイコンが出て来ます。ファイル末尾も不明(というか不明だからこうなってる)

この場合は右クリックから「このアプリケーションで開く」→「その他」

と選択し、

選択対象を「すべてのアプリケーション」にしてProtoolsを選択すると問題なく開きました。勘の良い人はファイル末尾を「.ptf」などに書き換えて開こうとすると思いますが、これをやってしまうとセッションファイルの中身が破損するようです(ファイルは開くがオーディオが並ばないとか、そういった謎症状)。

勘の良い人が損をするなんて興味深いですが、考えるのも面倒なので覚えておくと良いかもしれません。

まとめ

さてさて、過去の自分になかなかの贈り物を頂いたと思ったわけですが、「弾いて録って波形編集」って最高だけど、曲全体のキーチェンジは出来ないかもしくは最初からやり直す必要が出て来ますよね。ですので何もかも昔に戻って最高!みたいにはならないと思いますが、やはり自分の中に眠らせてしまっている良いものはしっかり発掘して、今に活かしていきたいなと思った次第でございます。

物事はシンプルに、

ツールもシンプルに、

やることもシンプルに、

楽しんで

うんちくよりも勢い大事

ということだなとつくづく感じました。

早速MPC4000とかTRITON,MOTIFなんかを探し始めてます。だいたいですがトータル12万位で揃う。やったことがあるという点で確実なプロダクションのグレードアップが12万でできるのやばくないですか!?笑

前回紹介したラップトップ環境の番外編です。細かい使用感など

ちょっと突っ込んだ個人的見解を述べようと思います。

メインDAWをCubaseからAbleton Liveに変えてみて

 コアなサウンドメイクをベースにしたいわゆるトラックメイクは以前からAbleton Liveで行うことも多かったのですが、わかりやすい音でポップスを書くとか、壮大な劇伴曲などはCubaseに頼っていました。今回どんな曲調でも、できる限りLiveで作業するようにしてみて一番大きかったことは、

「MIDIの編集がやりづらい」

 …やりづらいんですが決して悪くないんです(笑)なんて言うのかな、見やすさも含め先進のエディット機能を備えているのは確かにCubaseだと思うのですが、Liveのそれは「愛せる」って言うんですかね?スマートじゃないし手間がかかるけどなんか愛せるみたいな感情。

 変な言い方になっちゃいますけど、MIDIだけじゃなくLiveは何かをやろうとするとちょっとだけ時間がかかる。でもDAW全体の音作りに対する自由度が非常に高く、それをやった先に「これは自分がやりました」って自信を持てるような音が出る。プリセット音を並べてサクサク作り上げる音楽があるのは否定しませんし、それも素敵な仕事です。でも特にコロナ禍での心境の変化というか、急いでも仕方ないっていう感情が自分に芽生えて、「速い」よりも音楽に重要なことって他にあるだろうと思ったのが大きかったです。今年の上半期はその気持ちを強く持って仕事をしていましたが、何よりその結果(クライアント受けなど)が例年に比べて良かったので、自分にはこの「しっかり時間をかけていくやり方」が合ってると思いました。

オーディオ入出力について

 IFを使わないと言っていますが、ボーカルやシンセなどはちゃんとIFを介して、なんならクロックも入れて録ってます。ラップトップ環境のことをわかりやすく「外」と言いますね。外でやるのは基本的にDAW上のエディットです。自分の場合サンプルの波形編集とMIDIのエディットで曲のほとんど構築しているので、外で出来ることは多いのです。前回書き逃しましたが、フィールドレコーダーも基本的に持ち歩いていて、何かあったらそれを使ったりしていますし、MBPに内蔵されているマイクでその場所の音を録って、曲のバックグラウンドに敷き詰めたりして遊んでいます。

 出力については仕上げの段階で適宜スタジオ環境で聴くようにしていて、それを最低限のチェックとしています。ですのでラップトップだけで音作りをしてそれをそのまま人に聞かせるといったことはやっていません。トラックメイク、楽曲アレンジについては初期アイディアの具現化から9割程度までヘッドホンで作り上げます。ヘッドホンはYAMAHA HPH MT-8を使用しています。モニターしている音量が大きくないので、外界の音がうるさくてDAWの音が聞こえない時がありますw なのでノイズキャンセリングのヘッドホンの使用も検討しています。。また現状ラップトップのステレオミニプラグ出力から直接聞いていますが、ここは小型DACなどの可能性を今後模索しようと思っています。某氏とのやり取りで話題に上がったのですが、良い物があれば

冷却ファンのこと

 Intel i9のMBPでAbleton Liveをガシガシ使っていると、冷却ファンが全力で回っているようですw ほとんどの場合ヘッドホンをしているので自分は気づかないのですが、カフェなどで気になる方はいるだろうなと。。。(うるさくてすみません)。近くM1X搭載のMBPが発表になるとか。ハイパワーでTDPが低いM1のことですから、冷却ファンもさぞかし回りにくいんでしょうね。最初は今のもので十分と思っていましたが、環境によってここまで生産性が上がるのであれば、新製品もやぶさかではない感じがしています(笑)

音源のこと

 自分の中古MBPはストレージが1TBしかありませんので、何でもインストールできるわけではありません。特に巨大な容量の音源といえば弦楽器、管楽器といったいわゆるオケ系音源だと思いますが、これらは基本的にSpitfire社が提供しているLive Packを使用することにしています。追い込めばなんとかイケるレベルかと。予備で同じくSpitfireのAlbion NEOを入れました。他はメイン母艦にありますが、外では基本的に使用しない方向です。他はKONTAKTで必要最低限の音源類をインストールしました。最低限とはこれがないと自分を出せない、むしろやりたくないレベルで気に入っている音源のことです(笑)詳しくは過去ツイートをご参照ください。

 オケ系の真面目高品質系でなければ基本的にはAbleton Liveの付属音源およびシンセ、エフェクトで作れない音はほぼ無いだろうと思っています。工夫次第で

ラップトップ1台で不自由なく音楽制作

この仕事を始めて、何年かに一度トライしていたのですが、主にマシンスペックとその他の条件で満足のいく環境が整えられなかったりで断念していた事に、今年再びトライしてみました。

結果、制作環境として大変良好で実務運用に足るものだったのでここにご報告できたらと思います。

見ての通り作業に使うハードウェア的にはMacBook Proとヘッドホン、それとマグカップ☕️

中身は、

  • Ableton Live Suite
  • Fabfilter, iZotope, Valhalla, Nativeinstruments, WAVESなど

とてもシンプルです。これらのソフトウェアの選定について、最初にして最大の条件が

「ドングルが不要であること」

もちろん使いやすいとか、自分が好きな製品であることも重要です。

 まずメインDAWとなるAbleton LiveがSuiteレンジであることが望ましい理由は、付属する音源とPackの豊富さにあります。個人の見解ですが、他のDAWだとここの充実度が足りません(LogicおよびFL Studioは別。何とかなると思う)。従ってサードパーティ製のシンセや音源を入れられるだけ入れないと安心できない事態になってしまいます。

 普段使い倒しているプラグイン群がドングル要らずであったことは非常に助かりました。以前はドングルが必要であったベンダーがライセンスのローカル認証、もしくはオンライン認証に切り替えてくれた恩恵を受けています。ここは最近ようやくラップトップでも不自由しなくなった大きな要因に思います。

 ドングルを嫌う理由は単に煩わしいからです。スタジオ常設のPCであればドングルも挿したままですが、ラップトップは移動します。この煩わしさはラップトップを開こうと思う回数に影響すると思いますし、制作に打ち込む気力を削ぐものです。これだけは避ける必要があると思っていました。ですので、今回オーディオインターフェイスも基本的に使わない方向です。ヘッドホン、もしくはラップトップの内臓スピーカーでモニターするようにしています。気分が変わって楽しいです。

 少し前に呟いたのですが、現市場のコンピューターを使用した音楽制作においてオーディオインターフェイスは「必要です」。より良い音でモニタリングできるようにすることは絶対に重要と思います。ですので最初はできるだけオーディオIFを用意することをお勧めします。自分はその点において経験豊富ですし、IFが無くてもある程度音を判断できると思ったので、チャレンジも含めてIF無しの環境を選択しています。その背景に、スタジオに戻れば日々の業務で使用しているモニタリング環境があることが大前提です。

 話を少し戻して、iZotopeはマスタリングにOzone9、ノイスリダクションなどに使用するRX7を入れています(いい加減アップデートしたいw)。実際のところラップトップ1台でマスタリングはしませんが、単体プラグインとして使いますし、RXは制作中でも頻繁に使用するようになりました。

Native InstrumentsはMassive、KONTAKTを中心に使います。その他Xfer SERUM、U-heはフルに近い状態で入れていて重宝してます。

逆にReFx Nexusなどは好きだったのですがドングルが必要だったので今回廃止しました。ほかOmnisphereをはじめとするSpectrasonics群も現状廃止しています。これは別の理由があって、その音に甘えたくないと思ったからです。確かに使える音が非常に多くとても便利な音源です。が、使いやすいからこそ排除したいという気持ちがありました。音作りには手間をかける癖をつけたいなと思った次第です。

ドングルなしの大前提の下、そういったちょっとしたチャレンジをうまく盛り込みつつ、アプリやプラグインを選定していきました。

結果このような状態で頻繁に曲作りをするようになりました。

某所まで出向いて曲作り(と温泉w)だけに集中する時間を作ったり、出先の空いた時間で近所のマックやスタバ、公園などでやってます。ヘッドホンがちょっと人より大きいだけなので、目立ちませんし煩わしくもありません。

電源なしの環境も結構あって、車内などはアウトドア用のバッテリーを用意しようと思ってます。基本フル充電で出かけて追加電力なしで使用した場合、シャットダウンの警告が出るまで実質2時間半〜3時間くらいです。当然と言えば当然ですが、プロジェクトのCPU使用率にも結構影響を受けること、またブラウザとして使用しているGoogle Chromeがかなり電池を消費することが分かったので、Chromeは必要な時だけ立ち上げるようにしています。短いといえば短いですが、出先での間を埋めるのにはちょうど良いです。

必須となるネット環境ですが、実際はSPLICEでネタを探すときくらいでほとんど使用してません。必須と思っていたのは単なる思い込みでした(笑)。新しくDROPBOXシェアリングを導入した(これはまた別の機会に)ので、そこはこれから通信負荷がかかってくると思われますが、ネット周りは基本的にスマホのテザリングで賄えてます。フリーWi-fi もあるのですが、やはり遅いですし、繋がっていないならまだしも、ネットの遅さは効率およびモチベーションの低下に繋がります。

この環境で快適に過ごすためにいくつか購入したものもあります。

充電器は作業場据え置きと持ち運び用にAnkerの小型充電器を買いました。デザインが気に入りました。純正は大きいし目立ちますから。お気づきかもしれませんが外で何かやるときは「できるだけ目立たない」のも重要なファクターになってます(笑)元々目立つ人間ではないですし誰も気にしていないと思いますが、自分自身が落ち着かず集中できなくなるので。

充電器はラインナップの中で容量最大のモデルですが65Wしかなく、純正の80Wには及びません。従ってスタバなどでガチで給電しながら充電などするとかなり熱を持つようです。ケーブルは同社のC-Cケーブルが非常に質感が良かったです。とても気に入ったので長さ違いで2本購入しました。

実は作業場でのMBP制作のため多機能DOCK的なものも購入したのですが、これはHDMI出力が不安定で、これで増えるUSB端子も、そもそもCタイプに統一していけばわざわざAタイプの口を用意しなくても良いことに気づいて、結果あまり使えないなと思いました。

とまぁ長くなりましたがこんな感じです。

このシステムに取り組んでみて良かったことは、圧倒的に曲作りに取り組む時間が増えたことです。スタジオに篭ってスピーカーに正対して作業するのも好きです。しかしやはり色々な意味で疲弊もします。その点このシステムは、制作環境や気分を簡単に変えられますし「ラップトップを開いてヘッドホンを差し込めば作り始められる」という手軽さが自分にとって非常に大きな利益になっています。出かけるときも時間作れそうだなと思ったらとりあえずバッグを持って行ってます。

音質的なことや音源の豊富さを自身のクリエイティブとするならば、このシステムは欠点だらけですが、常に続けている思考や、突然思いついたアイディアを逃さず具現化するという点で言えば、最高のセットアップだと思います。もちろん別に作業場があって、そこで確認できたりより高いクオリティで作業できるというバックアップがあるのが前提で言えることと思います。今回のトライは非常にいい結果を得られているので、是非とも続けていきたいと思っています。